フォローアップ レポート:「バヌアツ人の幸福について」   白鳥貞夫

バヌアツの任務を終えて4年半が過ぎた。この間にバヌアツ再訪の機会はなかったが、当千葉SVOB会の出前講座や知人等の依頼を受け、学校や様々な集まりでバヌアツの話をする機会が年に数回あり、その度にバヌアツ体験を反芻するためか、むしろ滞在時よりもバヌアツが身近に感じられるような気がしている。

2004年秋に小生が赴任した頃のバヌアツは「知る人ぞ知る」国で、郵便局の窓口でも「どこの国ですか?」と聞かれた。バヌアツが多少知られるようになったのは、2006年に英国のシンクタンク「nef」(The new economics foundation)が発表した「Happy Planet Index」でバヌアツが「世界一幸福な国」に挙げられ、マスコミで報じられたからだろう。小生への講演依頼でも、「バヌアツ人の幸福について話してくれ」と言われることが多い。

nefの「幸福度」の計算式は「国民の人生満足度」×「平均寿命」÷「環境負荷度」で、簡単に言えば、地球環境に負荷をかけず、満ち足りた気分で長生き出来る国が「幸福度の高い国」ということになる。欧米の先進国は人生満足度と平均寿命のスコアは高くても、それを維持する為にエネルギーを浪費するので評点は低くなり、バヌアツや中南米の国民は人生に不満がなく、且つエネルギー消費が少ないので評点は高い。(nefの当時のウェブレポートは廃版になったが、幸福度ランキングの部分をここに転載させてもらった。)

バヌアツと共に「幸福度」で名を馳せた国にブータンがある。nefのランキングでは、平均寿命がやや短いのが影響して13位だが、「人生満足度」はバヌアツを抜き、スイス・北欧に次ぐ高評点を得ている。小生はブータンも是非見たいと思っていたが、本年(2011年)3月に観光で訪れる機会を得た。国の立地と成り立ちはバヌアツと随分異なるが、第一印象が共通している。それは国民の表情や振舞いが穏やかなことで、特に子供たちの爽やかでしっかりした顔つきに強く魅せられる。

小生は帰国直後のレポートで「統計データを詮索するまでもなく、バヌアツの子供たちの屈託のない笑顔と澄んだ瞳を見れば、彼等が温かい家庭と包容力ある地域社会の中で健全に育っていることは一目瞭然、この国の幸福度が世界一であることが納得できるでしょう」と書いたが、ブータンにも同じことが言えそうだ。子供は親の鏡と言われる。子供たちが明るく健全に育っている社会は、いかに経済的に貧しくても、大人たちも幸福に暮らしている社会であることは間違い無さそうだ。小生がバヌアツで撮った子供たちの写真から、そんなことを感じていただければ嬉しい。


写真集:バヌアツの子供たち

学齢前の子供たち(エパウ村) 学齢前の子供たち(ペレ島)
陽気に遊ぶタンナ島の子供たち 同左
家の手伝いをする小学生(エパウ村) 幼児も家のお手伝い(アンバエ島)
観光客に花や飴を差し出す小学生(普通と逆) ギターを弾く真似をしながら歩く
一人前の男 一人前の女性
伝統カヌーを漕ぐ少年 二人三脚を習う高校生

筆者のバヌアツ体験をホームページ「バヌアツ通信」に掲載しました。帰国後に追加したバヌアツ民話(和訳)、バヌアツ人の戦争体験(和訳)もあります。http://www7a.biglobe.ne.jp/~shirats

以上