第34回活動報告会 - 2023年2月19日
The 34th activity briefing session on Feb. 19, 2023 13:30-16:30

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開会挨拶
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(1) 企画説明 登内 明 コーディネータ == 職種:経営管理 ==

登内コーディネータの企画説明

  • テーマ:異文化社会から学んだことを伝え、一緒に考える
  • 概 要:本日のコーディネータ担当の登内です。これまでに出前講座講師を担当された3名の講師にテーマを絞って話題提供していただき、参加される皆様と双方向的意思疎通ができるように活動報告会を進めたいと思います。 身近でありながら世界につながるテーマを一緒に考えてみましょう。
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    (2) 講 演:阿部 清司 講師 == 職種:日本政治経済 ==

    阿部講師の講演

  • テーマ:開発途上国から学ぶ -Two-Way Communication-
  • 概 要:アルゼンチンには南米大陸の自然のすべてがあり、未知の美しさが無尽蔵にある。 乾燥しきった北の平原から南の氷の大地まで、南北3700kmに及ぶ国土はそれぞれの地点で新しい感動的な光景を示す。 西にはアンデス山脈が四季折々の彩りをそえ、東に向かっては肥沃なパンパの大草原が広がる。 アルゼンチンはヨーロッパ移民の豊かな国ではあるが、発展は停滞している。 その社会に中南米に共通する伝統的な諸問題が根強く存在する。 拙著「大学と日本の国際化」で学生参加型授業を提唱した。 一部を引用する:「意思の疎通に基づくクラスは双方向的である。双方向的意思疎通(Two-way Communication)の基礎は相互信頼にある。 学生参加型授業は、学生から見れば参加型学習にあたる。 今は学生が教員を民主的に表する時代である。 アメリカはずっと前からそのようにしてきた。 日本も今は教員が効果的な教育方法についてもっと学ぶ時代である。」
  • 双方向対話
    聴講者:阿部先生は2年間、社会・文化にどっぷり浸かって異文化社会から学んだ事は?
    コーディネータ:それ大変重要な質問ですね、それが今日の本題ですよ。
    講 師:友好的で親しみやすいアミギシモ、自分の愛用していたものをあげるのが最高のギフトなどです。
    聴講者:アルゼンチンは、発展するだろうと言われていたが、途上国のまま、なぜなのか?
    講 師:社会の統一がない、教育不備、政治の混乱、信用されない役人など停滞する悪循環が沢山あります。
    聴講者:同じ移民国でありながら南米と北米で大きな違いが出てきたのはどういう理由からか?
    聴講者:私もアルゼンチンに行き、アメリカにも11年いた。 同じ移民国でも、アングロサクソン系のアメリカ移民に対し、アルゼンチンはイタリア人が40%、 スペイン人が30%で文化の底流や社会システムの底流にラテン系の思想が非常に強い、 そういう違いがある。
    聴講者:現地の学生とディスカッションされて、日本に欠けているものは何だと思いましたか?
    講 師:外国人に対する親近性、自分から近づいていく、そういう所はアルゼンチンの良い所で、日本人に欠けている。 そういうのは見習うべきと思う。
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    (3) 講演:高瀬 義彦 講師 == 職種:電子工学 ==

    高瀬講師の講演 ・テーマ:アラブ文化に接して広がった世界理解 -文化相対主義-
    ・概 要:赴任先はシリア国立ティシュリーン大学工学部メカトロニクス学科。
    学生との会話で、シリア人は大シリアの民族という誇りを持っていると聞いた。 シリアは、歴史の各時代を象徴する遺跡が多数残存する人類史博物館のようだ。 現在シリアは、イスラム文化とキリスト教文化が共存する社会になっている。 これは、世界遺産「古代都市ダマスカス」には世界最大級のウマイヤド・モスクとキリスト教系のレストランが共存していることやシリア市民生活に普通に見られる。 このように、シリアでアラブ文化に接して世界理解が広がった。 文化相対主義、いわば、お国柄を認め合い平和と発展に貢献する事が大切だと気付いた。 しかし、帰国後の2011年3月にシリア内戦が起こった。 これによって、文化相対主義の限界にも気づいた。 今後、文化相対主義はどのように発展するのだろう?
    ・双方向対話
    聴講者:シリアには遊牧民はいますか?
    講 師:います。シリアとトルコとの国境付近には山があって穀倉地帯が広がる地域ですが、南の方に行くとシリア砂漠になります。 シリア砂漠近くに行くと遊牧民がいます。
    聴講者:どうしてシリアのアサド政権はいつもロシアを擁護するのか?
    講 師:私がいた当時、シリアは社会主義国扱いだったようです。 大学の先生方は旧ソ連に留学して学位を取得したと聞きました。 だからそういう関係が続いていると思う。
    聴講者:私が行ったパキスタンは完全なイスラム教国でアルコールはない。 だけど、シリアではアルコール飲める。ユダヤ教、キリスト教と共存と言っても摩擦はないのか?
    講 師:大学の先生もイスラム教徒とは言いますがビール飲みます。 イスラム教にはシーア派、スンニ派、それにアラウィ派がある。 アラウィ派(シリア指導部)は少数派で。 イスラム教とは言えないという学者もいるそうなので、だからじゃないかと思います。
    聴講者:文化相対主義よりはアインシュタインの特殊相対性理論の方が好きだと言うことですか?
    講 師:私は理系です。理系の相対性理論を間違っていると言う人はいないが、文化相対主義となると限界があると指摘されている違いがあると思いました。
    コーディネータ:文化相対主義は、文化をどっちの文化が優れていると言うような評価はできない、あくまでそういう文化があるので尊重すべきだと言う。 重要なのは、何でそのような文化が現れたのかを学ぶことだと思いますが、いかがですか?
    講 師:理系の理論が面白いと言うのは全く個人的な分野の違いです。 文化の背景を学ぶと言うことは必要だと思いますが、やはり理系の理論に興味があります。
    聴講者:相対主義の限界は、文化系の人間から言うと当然だと思う。 文化は価値観と結びついている。私はトルコに行った。 当時のトルコは「なんちゃってイスラム」だと思った。 私の仕事のパートナーはビールなんか平気で飲んだ。シリアもイスラム圏ではゆるいのですか?
    講 師:そういう雰囲気を感じた。キリスト教も12%、大学の先生にもイスラム教の方もキリスト教の方もいた。 だからゆるい行動も出てくると思った。

    (4) 講 演:三輪 達雄 講師 == 職種:協同組合 ==

    三輪講師の講演 聴講者と講師の対話

    ・テーマ:ブータン王国から見た幸せとは
    ・概 要:国民投票で97%の国民が自分は幸せであると答えたとして、「幸せの国」として世界に知られるようになったブータン王国だが、2008年の本格的な開国から世界との交流が始まり、インドのテレビが受信できるようになったり、インターネットが普及したりしたことで、若者を中心にして変化がおきて来ている。 ブータンのお坊さんが、「幸せになるためにはどうすればよいのか?」と問われたときに良く使う答えは、「I want happiness」という言葉から「I」(つまり我)と「want」(欲)を除けば「happiness」(幸せ)が残ると言います。 言葉の遊びですが、自我の欲を捨てれば幸せになれると説きます。 そもそも幸せとは何でしょう?絶対的な幸せは存在しません。 人が幸せを感じるのはあくまで相対的なもので、他人と比較して幸せを感じているようです。 であれば、本格的な開国前のブータン王国のように他人の情報がない場合は、幸せに感じることは容易であったかもしれない。 インターネットが解禁されて情報が豊富に手に入る現在、ブータン王国の人々はこれまでと同じように幸せを感じて生きていけるのか。 まだ、答えは分かりません。
    ・双方向対話
    聴講者:幸せの国の平均寿命はどのくらいですか?
    講 師:平均寿命はだいたい60歳行かないですね、50歳代です。
    聴講者:それはなにが原因だと思いますか?
    講 師:それは医療体制が整ってない、都会に行けば病院があります。 でも3,000mを越えた向こうに行ったら病院も何もない。 その村を出ない限り自分が不幸だという実感はないわけです。 この国が幸せだというGNH(Gross National Happiness)は、5年に1回の国勢調査で、全国民に聞き取り調査をやった結果。 私が行った10年位前の国勢調査では97%が幸福だと答えたので、世界一幸福な国として有名になった。
    聴講者:ブータンには観光に来る人が沢山います。あの人たちは肉を食べますか?
    講 師:ブータン人も食べます。仏教が禁止しているのは殺生だけで、死んだ肉を食うなとは言ってない。
    聴講者:牛も豚も?
    講 師:牛も豚も鶏も全部食います。ただ、私の調べた限りでは屠場はない。 輸入と、あの人達はお祭りの近くになると牛が死ぬと言うんです。 私はただ神様に血を捧げたいから首をちょっと切っただけだと。
    コーディネータ:これからブータン国にもAIとか色々入って来る。 ブータン国民も便利な物を使えば生活楽になる、楽になれば幸せになれそうだ、そうすると、考え方が変わってくることはありませんか?
    講 師:当然影響を受けてくるだろうと思います。 仏教を信じ切れていれば前に進めない、どこまで仏教を信じ切れるかと言うことが鍵じゃないか。
    コーディネータ:GNHは幸福度を定量的に評価出来ると言うので調べて見た。 ブータンのGNHの順位は2013年世界8位、ところが、2019年では95位に落ちている。 GNHは本当に国民の幸福感を評価できると思いますか?
    講 師:統計の取り方だと思う。ブータンの場合はただ国民に問うているだけです。 それに対してヨーロッパなどがやった統計は、例えば男女平等がどれだけ進んでいるかとかを指標にして点数をつけていく。 指標の取り方ですね。
    コーディネータ:ちなみに、2022年のGNHを見ると、1位はフィンランド、2位はデンマーク、3位がアイスランド、4位がスイス、日本は54位、何をもって幸福かという前提がおかしいのではないか。 国民がどういうことを重要視しているのか、その重要視していることが実現されているのかどうか、それで幸福度は評価されるのではないかと思いますがいかがですか?
    聴講者:今の議論は全くナンセンス。なぜナンセンスかと言うと、今のGNH、登内さんの言ったのは、教育の普及率だとか、ある意味で定量化できるものです。 それに対して、三輪さんがおっしゃったのは、ブータンの人達は心の問題として自分は幸せだと思っているわけですから、それを同じ風に議論したってナンセンスです。
    聴講者:日本では性的マイノリティ者をどうするかでもめています。 ブータンではどう思いますか?
    講 師:LGBTがブータンで話題になったことはまずなかった。 だだ、性に関してはフリーです、当たり前に夜這いOKですから。離婚、結婚はよくある。 性に関してはフリーな考えを持っているので、同性婚なんかも意外と認めるかもしれない。
    コーディネータ:地域住民の参加もいただいていますので紹介します。
    聴講者:登内さんとは一緒に経済の勉強会をしています。 そこで話題になるのは、日本について、失われた10年、20年、30年を残念がること、私も同じ気持はあるが、ちょっと違和感を持っていて、環境問題、CO2問題など考えた場合、われわれの周りを見渡すと、物をもっと欲しいという気はあまりしなくなっているのではないか。 そうすると一人当たりのGDPをもっと増やすことだけでいいのか、やはり、行きつくところは幸福ではないのか。 もう一つ考えたのは、AIとかITとかいう問題、おそらく日本も20年とか25年とか経つと日本もAIとかITが大勢を占めるだろう、我々の働く場がなくなるのではないか。 日本人の幸福感は働くことにあるのかもしれない。 世界的に見て日本人の幸福感は意外と低い。 物の本によると一人当たりのGDPがある程度まで伸びたところまで幸福感も伸びるが、かなりの所まで行くと横ばいになると言う結論が出ています。 そういうことを考え併せると、2、30年後のAI、 IT時代、いったいどうなる? 私は紀元前のギリシャの都市国家を考えると分かり易いのかなと思っています。 奴隷制があった、奴隷は製造業と農業に従事していた、これがAI、 ITで置き換わると、市民の生活になる、市民は何をしていたか、一つは政治、2番目に国防、3番目に貿易や商売の仕事、4番目に文化。 AI、 IT時代になった場合に、はたしてその文化に日本人が幸せを感じるだろうか、それだけでいいのだろうか、何か+α、ブータンから学べないのかと感じました。

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