公開講演会 2019年5月11日 講師: 志覇武 J. モハメド
演題: 私が体験したシリアの春/戦乱の母国を逃れて
千葉県JICAシニアボランティアの会の主催する講演会は今回で24回目となりました。
好天の土曜日でしたが、来賓3人を含め64名の参加者で 研修室は満席でした。
一般の参加者が27名とかってないほどの人が来てくださいました。
シハブ(志覇武)J.モハメド氏の講演では、以下のように日本では一般には知ることのできない、深刻な実情が話されました。
● 歴史的大シリアの時代から、現在のシリア-シリアの春は内戦ではない!
シリアの歴史は、遠く一万二千年に及ぶ。地域的には、レバノン、ヨルダン、イラク西部地域、パレスチナを含む周辺諸国に大シリアのシャム国である。
この地域は、7つの民族が平和に暮らしていたのです。地域内に対立が始まったのは、400年前にオスマントルコ帝国が滅びて、
西欧の国に支配されるようになってからです。彼らは、国旗、ビザというようなものを作り、 地域を分割させたのです。
● 戦火と実態-ビデオからの叫び
短いビデオの紹介がありました。病院が空爆を受けたシーン、化学兵器の犠牲となった多くの人々等々がありました。
現在シリアには、国内避難民が630万人、国外避難民が500万人、国内に支援を必要とする人が1,350万人います。
● 紛争の原因-大国の黒い思惑と自国のまとまりの弱さ
アラブの春から始まったシリアの春は、最初は武器のないクリーンな革命でした。それを激化させたのは、どうしても紛争を起こし
この地域を分割しておきたい勢力(西欧大国、ロシア)である。彼らが、ギャングを雇い武器を持ち込んだからである。
ISはシリア人ではありません。ですから、内戦ではありません。歴史的にこの地域は、多民族が平和に暮らして来たのです。
今なぜ、国内で内戦をする必要があるのでしょう。
このような悲惨な紛争をやめようとしないのは、その方が利益だという勢力がいるからです。
一方国家として国民がまとまっていないことがあります。
アラブの春の混乱後に行われた選挙結果を、国民が一致して支持しないで、また二つの勢力に分かれてしまいます。
これは、もともと汚職があって王様を信用できないからです。例えば、サウジアラビアの王様が何を言っているのかわかりません。
アラビア語ではなく、内容がわからないというレベルなのです。
私は、1998年にパルミラの遺跡を日本が修復するというミッションに携わったことがあります。最後の所で否決されました。
上層部の者が欧米からの賄賂を受けたと聞いています。
● 国際社会への期待-国連への期待
国際社会では、銃で何人かが殺されたと言えば、大変なニュースになるのに、なぜ、シリアの子供たちが何百人も化学兵器の犠牲になっても、
助けようとしないの ですか。国連には、どっちが化学兵器を使ったかという詮索よりも、使用を止めるよう働きかけてほしい。
シリアは、今まさに空爆を受けているのです。国連等が重要なパルミラ遺跡を守ると言って助けてくれますが、そんな事より、
子供たちの命を守る働きかけをしてほしい。 建物は、後からでも修復ができますが、人の命は戻りませんから。
紛争が11年間も続いています。その間子供たちは、学校に行けないで大人になります。このままでは、皆が犯罪に走ってしまいます。
それは防ぎようがありません。 日本には、他の国々と協力して、何とか助けて欲しいと願っている。
以上のように、講演会は、聴衆に、苦しみに喘ぐシリアの人々を直接援助したいと思わされる内容となりました。
この結果、講演会と同時に行なわれていた募金活動には、早速23,177円の募金が寄せられました。(添野)
Copyright © The Association of JICA Senior Volunteers in Chiba
|