第27回活動報告会 - 2019年9月7日
The 27th activity briefing session on Sep. 7, 2019 13:30-17:00
- 場所:千葉市国際交流協会 2階会議室
- 主催:千葉県JICAシニアボランティアの会 共催:JICA東京国際センター
- 後援:千葉県、千葉市教育委員会、千葉市国際交流協会
- 来賓者(敬称略、右の写真で右から順に):JICA東京センター次長 長谷川 敏久
JICA千葉デスク 国際協力推進員 安達 夏美、JOCV千葉OB会 平澤 昭男
特別講演: JICA東京センター次長 長谷川 敏久「世界情勢の変化とJICAの今後の施策について」
長谷川氏は、世界の援助の状況、そのなかでの日本の国際援助の状況、JICAの施策などを、理事長のプレゼンテーションに基づくと
断ったうえでデータを示しながら話されました。当会として期待していたボランティア活動については、
最近行われた制度改革で未定部分もありほとんど触れられませんでした。
講演の概要は次のような内容でした。
JICAの目指すもの、なぜ国際支援を行うのか?日本国内では支援に対する理解度が国際比較でも高い。日本もかつて国際援助を受けていた。
新幹線、黒部ダム、東名高速道路などは援助を受け建設された。日本政府の方針は2015年の開発協力大綱に示された。
これはかつてのODA大綱を拡張した内容を持つ。民間ベース、企業、NPOを含めて開発を考える内容になっている。
JICAのミッションとビジョンは、人間の安全保障と質の高い成長を目指して信頼で世界をつなぐと表現された。ビジョンは信頼で世界をつなぐ
(英語表現:Leading the world with trust)と決定された。
持続可能な開発目標(SDGs)とは、これは2015年9月に国連で採択されたものだ。これに基づくJICAの具体的な取り組み(人間の安全保障の基に)として、
ヨルダンでのシリア難民支援、ヨルダンでのパレスチナ難民支援、ウガンダでの南スーダン難民支援、フィリピンでのミンダナオの平和と開発への貢献、
南スーダンでのスポーツを通して平和構築、アジア各国での支援、各国での基礎教育への協力、エジプトでの日本式教育の導入がある。
質の高い成長を目指すものとして、インド、インドネシア、ウガンダ、南スーダン、カンボジア、各国でのJICA-JAXA連携支援、ブラジル、
チリへの支援がある。さらに、JICA開発大学院や放送大学と連携してリーダーとなる人材を育てる事業、開かれたインド・太平洋構想に基づく
事業展開、法の支配の実現などがある。
活動報告: 浦木 仁(職種:品質管理・生産性向上)「コロンビアで日本の生産管理方式が芽吹いている!」
● コロンビア概要
コロンビアは、カリブ海と太平洋に面する沿岸地区、2つのアンデス山脈からなる山岳地区、そして赤道が横切るアマゾン熱帯雨林地区からなります。
各地域の気候は大きく異なり、一次産業は盛んで食文化も豊かです。人口の約75%が、気候の良い山岳地帯に生活しています。
首都ボゴタは、標高が高すぎるため(2,640m)寒く感じますが、第2の都市メデジン(1,540m)は、常春の気候で花栽培等が盛んで、
交通機関も発展して暮らしやすい都市です。
内戦も収まりつつあり、治安は改善してきていて、経済も安定的に成長しています。各都市には貧富の差を地域別に6階層に分けたエストラート制があり、
所得の低い人は納税を抑えることが出来、貧富の差が大きい割には全国民が幸福だと感ずる国になっています。尚、現在はベネズエラからの難民が急増し、
問題になっています。
コロンビアの製造業の97%以上が零細企業で、全従業員の50%以上がそこで働いています。私の関係した縫製・繊維業界では、
コロンビア全体の従業員の10%が働き、その40%がメデジンに集中しています。よって、これらの従業員の職業訓練が重要になっています。
● コロンビアで行った活動
私はメデジンの国立職業訓練庁(SENA)の縫製技術の教育現場にて、生産管理のコンサルタントとして活動しました。拠点作りの為、
赴任現場の改善指導から始め、他の現場や企業工場へ伸展しました。
目標は「改善を自主的に継続できる組織を作る事」です。現場パトロールを自分達で行い、整理・整頓の状況を確認し、改善サークルを立ち上げ、
改善進捗状況会議の開催などへと展開していきました。
彼らの真面目で几帳面な性格故か、想像を超えるスピードで進み、職場の朝のラジオ体操は、約1年半で延べ22,000人以上が参加、
安全確認の指差呼称も実施しました。
SENA現場の教育が終わり、アドバイザーに徹しつつ、企業の訪問改善に重心を移しました。各企業は非常に意欲的ですが、
集団で考えるという企業文化が無いので、中南米バージョンでの組織作りを進めました。今、最終指導もほぼ終わり、
各組織における日本式生産管理法の芽吹きを感じています。これからが楽しみです。
活動報告: 増田 光司(職種:日本語教育)「モロッコでの日本語教育活動など」
● モロッコ概要
立憲君主制国家、面積44.7万㎞2(日本の約1.2倍、西サハラを除く)、人口3千366万(2016年)。他のマグリブ諸国に比べ政治の安定と治安の良さがあり、
最近は国際的投資の集中。食品・食材は充実、イスラム教国でありながら飲酒も可能です。
気候(北部地中海性気候~内陸部のステップ気候)は食文化と共に変化に富みます。言語は、母語としてダリジャ(アラビア語モロッコ方言)とベルベル語があり、
かつての宗主国のフランス語があります。最近は英語もよく使用されています。
● モロッコでの日本語教育活動など
私のJICAボランティアとしてのモロッコ派遣期間は2016年10月から2018年10月、活動地は観光地として名高いマラケシュ市のカディアヤド大学・人文科学部
で、大学内学生に対する日本語公開講座と大学院応用英語学科の必修日本語科目を担当しました。
ここで、日本文化・日本語普及の中心となっているのは、学生団体の日本文化クラブ(JCC)である。JCCは日本語公開講座の運営者、参加者の主体、講師で、
私の活動の協力者です。スピーチコンテスト・マラケシュ予選の開催、JLPT(日本語能力試験)受験受付も協力して行いました。
上述の必修日本語科目は、モロッコ全大学中で唯一の正規科目で、大学は日本語教育に積極的であり、現在派遣中1名のJICAボランティアに加えて
1名の増員を求めています。
特筆すべきは、JCCクラブ員にみられるように、多数の学生・若者が日本・日本文化に対して強い興味と憧れを持っていることです。
マラケシュ市中にもJCC以外に若者の日本クラブがあります。いずれも、スタートは日本のアニメ・漫画ですが、そこから日本・日本語・日本文化に対する
興味が生まれています。モロッコは、地中海諸国極西に位置しますが、地中海北側の西欧諸国に政治・経済的に圧倒・圧迫されています。
彼等にとって歴史の翳りのない日本は、ユーラシア極東の遠い夢の国のイメージがあると思われました。
非常に興味深く喜ばしい事例を述べます。一つは卒業した前JCCメンバーによる、マラケシュ市近郊小都市での日本語入門講座の誕生・運営です。
JICAボランティアの当地訪問の際、方々でモロッコの人々の日本語による自己紹介に驚かされました。二つ目は、当時のJCC部長による
在マラケシュ日本人へのダリジャ(アラビア語モロッコ方言)教室開催です。前者はJICAの技術移転の精神が日本語教育の場で具現化したもの、
後者は理想的な双方向のボランティア活動の誕生です。
最期にマラケシュ市の「寺子屋」の授業を付け加えます。モロッコ人の夫を持つ日本人女性の希望に、マラケシュおよび近郊のJICAボランティア一同
(随伴夫人も含む)が応え、その子弟に日本の小中学校レベルの補習を毎週行いました。女性の一人は既に帰国し2名の男子を日本の学校に通わせています。
モロッコと日本の懸け橋となる彼等の健全な成長を期待いたします。
以上、日本語の教室内にとどまらぬ日本語関連の報告です。
活動報告: 建川 大輔(職種:電気通信)「マレーシアでのボランティア活動」
● マレーシア概要
アジア太平洋の中心に位置し、年間を通して温暖な気候で、日本人の移住先としても近年人気ナンバーワンとなっています。13の州と3つの連邦領からなり、
人口は約2800万。州によってはスルタン(王)が居て、持ち回りで国王に就任します。現在の首相は「ルック・イースト」政策で有名な親日家マハティール氏。
国土は首都のクアラルンプールのある西側半島部(シンガポール、タイと国境を接している)と、東側ボルネオ島(ブルネイ、インドネシアと国境を
接している)に分かれます。民族はマレー系、中華系、インド系、ボルネオの諸民族からなる他民族、多宗教国家です。国教はイスラム教ですが
他宗教の祭日も国家の祝日となっています。産油国であり、国策の石油企業ペトロナス本社は首都のペトロナスツインタワーで知られます。
電子産業、パーム(アブラ椰子)栽培や林業も盛んです。
● ボランティア活動
東マレーシア、ボルネオ島のサラワク州の都市Miri郊外にある職業訓練校の電気通信学科で、教員達に最新の電気通信技術
(特に携帯電話インフラシステム技術)を教えるために、2016年10月から2018年10月までの二年間、活動しました。
電気通信学科の講師を対象にして、最新の電気通信技術に関する技術の伝授セミナーTTT(Train The Trainers Session)を月に数回催すことにしましたが、
講師達や学校の催事や会議や学期休みの都合で一堂に集まる機会が少なく、予定よりも開催回数が極端に少なくなってしまったため、
(年間数十回の予定が10回未満)活動2年目以後はトークセッションと銘打ってディプロマコース学生も対象に加えて開催を続行することにしました。
携帯電話技術の進化(1Gから来るべき5Gまで)、携帯電話インフラシステムのインプリメンテーションフェーズ、衛星通信技術の応用などのトピックスで、
毎回熱心な質疑応答がありました。
電気通信学科では光ファイバー融着装置の実習教育を行っていますが、日本製の装置の損傷が激しく、講師達は装置メンテナンスが不特手であり、
日本での技術研修を希望していました。そこで、私の活動一年経過時の健康診断のための一時帰国と学長の国際学会参加のための来日スケジュールが運よく
重なったこともあり、東京都内のメーカー2社に学長を案内し、トレーニング施設見学を行い、学校側から中央省庁に技術研修実施の提案を行いました。
その他、マレーシア国内のボランティア分科会「日本文化の会」メンバーと、学校の日本文化の日イベントを催したり、新たに産業人材育成分科会を
設立したり、国際交流基金の事業「日本語パートナーズ」が主催するイベント「サラワク・ボン・フェスト」で協業しました。他州やブルネイで
開催のイノベーション関連のイベントに学生を伴って参加したり、ロボット競技会に講師達と一緒にチャレンジしたりと、概ね忙しく過ごしました。
まとめ
- JICA東京長谷川次長の講演によって、世界の援助の状況、そのなかでの日本の国際援助の状況、JICAの施策などを理解することができた。
- 報告者各位は、パワーポイントで作成した資料を使って、動画なども取り入れ分かりやすく活動を報告したことにより、
現地の様子がよく理解できた。
- 「活動で一番成果の上がったことは?」「この経験を今後どのように活かすか?」などの質問がでて、報告者は丁寧に答えていた。
- 参加者:来賓3名、参加者35名
- 活動報告会の終了後、近隣のレストランで懇親会が開かれた。
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