思い出の写真

ラマザンの断食が終わるとパキスタンの小学、Eid休暇になります。カラチの海岸で遊んでいた一家です。 自動車部品、アクセサリー製造業協会との会議で
北部のタキシラにあるガンダーラ仏教遺跡、こういった遺跡はたくさんありますが、あまり整備されていません。 CP(左端)及び他の関係者との会議で
北西部のアフガンに通じるカイバル峠 北西辺境州のペシャワール近郊で、
パシュトゥーンの子供たち
パンジャブ州の州都ラホールにあるモスク 最北部のカラコルムハイウェイから望む
ナンガパルバット山、K2に続く高峰
中国と開発したカラコルムハイウェイ、
ハイウェイとは名ばかりの怖い道でした
中国国境に近いフンザで子供たちと

レポート: パキスタン産業雑感                 羽田 亨

パキスタンイスラム共和国はアジアと中東の境に位置し1947年にイスラム指導者M.A.ジンナーの指導の下にインドから分離独立したイスラム国家であり、独立60年を迎えた。90%以上の国民は敬虔なイスラム教徒であり、一日五回と金曜礼拝日に偉大なるアラーへのお祈りを欠かさず、年に一回のラマザンにはほぼ一ヶ月の間日の出から日没までの間一切のものを口にせず、アラーへの忠誠を誓う。

欧米からはテロリストの温床と危険視されているが、人々は総じて穏健な性格であり、親愛の情に富んでいる。但し、銃社会であり身近に発砲があったり、イスラム宗派争いの爆破が日常的にあるので気を抜けないのも事実である。

政府発表の貧困率は36%との事だか、一部の中産階級とその支配下にある人との差は予想以上に大きく、より多くの貧困層を抱えているように思われる。

独立分離後60年を迎えた同国は、産業化への地道な努力の後1970年代の政権による国有化という不幸な歴史を経て現在に至っており、国民一人当たりGDPは700ドル超に止まっている。しかし近年の成長率は7-8%に達しており、本格的な成長期に入ったとの見方もある。

それゆえ、産業の整備、近代化は急務と考えられ、その一環として、工業省、民営化・投資省は共々FDI海外直接投資受け入れを促進し、その結果としての製造技術の確保、雇用の安定拡大、輸出競争力向上、慢性的貿易赤字改善を重点目標としている。そして、ASEAN型外資導入を念頭に、投資優遇制度、インフラ整備に取り組んでいる。

一方、綿、天然ガス以外に有力な自給資源を持たない同国の製造産業の実情は、綿製品と関連産業(化学品、肥料及び近年伸びの著しい自動車組み立て(30%/年)を除くと、総じて小規模、旧体質である。特に、産業用素材、中間材は不足しており、その大半は輸入され貿易赤字(120億ドル/2005年)の一因となっている。

同国へのFDIは過去10年間に略100億ドルあり、これまでの投資分野は、食品、オイル、ガス、電力等であったが、近年はIT、金融に集中している。又、投資国は米英が主体であるが、中国、UAEも比率を高めている。同国への製造業投資を抑制している要因として考えられるのは、政情不安、国内消費力、インフラ(特に電力、道路)であるが、国策としての長期の産業政策、FDI導入への強固な対外政策の不在も大きなファクターと思われる。

投資環境整備を目的として設立された工業省傘下のカラチのビジネスサポートセンターでの一年間及び産業開発公社プロジェクトアドバイザーとしての一年間を通じて、プラスチック関連産業に対象を絞り、末端市場、中間加工業、素材製造に亘る一連のプロセスの実勢把握と投資機会の想定を行い、工業省と関連省局へ提言を実施し、まとめとして産業ロードマップを含む「パキスタンプラスチック産業の健全な発展のために」英文を寄贈した。

本活動は主にビジネスサポートセンター、産業開発公社のGMをCPとして実施したが、他の関連省局(技術開発会議、中小企業開発局)とも連携した。

活動の流れは、各種統計の収集、整理、関連産業への聞き取り、実情のまとめと投資機会の想定に基づいた提言作り、CPとの協議、上部への提言であったが、大半は産業の聞き取りに費やされた。又、CPが本来の業務に多忙のため、単身での調査が主となった。期間を通じて約60の協会、個別企業を訪問し、又、周辺の金型、機械製造とも面談を行い、プロセス上の課題、長期需給、投資対象の絞込みに有用であった。又、カラチにあるM.A.ジンナー大学で特別講義の機会を頂き、プラスチック産業におけるビジネスチャンスと題して次代を担う若者と話し合う貴重な体験もした。これらの活動が概ね温かく迎えられ、フランクな話し合いができた事は、上述の国民性によるものであろうと感謝している。

同国のプラスチック産業は、総じて人、物、金ともに乏しい現状の経営から今後、輸出立国を目指せるまでの大きなギャップを解決して行く必要があり、国、投資家が大きな支えとなるべき事は言を待たない。発展を心から祈ると共に、活動を支えてくれた現地関係者、生活の無事の大きな力となってくれた人々とその家族の協力を忘れる事は無いであろう。

以上