「カンボジア国家警察へ派遣されて」   後藤 泰紀

私は2001年10月から2003年10月まで、2年任期のコーディネーターとしてカンボジアの国家警察へ派遣されました。SVチームは日本の警察で鑑識を経験された警察OBのSV1名と、薬物分析の経験・知識のある警察庁OBのSV1名と、コーディネーターの私、計3名が、カンボジア国家警察へ派遣される予定でしたが、鑑識OBのSVが病気をされ、カンボジアへSVとしていくことが出来なくなったため、薬物分析のSVとコーディネーターの私2名編成で国家警察へ派遣されました。当時カンボジアの治安は現在よりも悪く、カンボジアが発展していくためには、治安の回復が重要な課題の一つとしてあげられていました。

我々の配属先は、首都プノンペンに本部があるカンボジア国家警察の科学技術部、つまり日本の警察で言えば、科学鑑識部に相当する部署に配属になったことになります。我々に当られた部屋は、国家警察長官の部屋がある古い建物でしたが、広さも二人にしては十分にあり、エアコンもあり、年を通じて暑いカンボジアでは本当にたすかりました。

科学技術部とは名ばかりで、何の設備もなく、我々が予算を携えて来るのではないかと期待して、解剖室を用意して待っていたようです.国家警察へ赴任するやいなや解剖室へヴァン・ロタ部長から案内され、解剖用の機器設備の提供を要望されました.派遣前の研修で、資金の援助や資材の援助に関し、過大な期待をもたせないようにとの注意を受けていましたので、我々は経験・知識の提供・教育にきたのであって、資材や機器の提供はあまり出来ないと率直に伝え、理解を得る様努めました。

コーディネーターの役割りは、SVチームの為のJICA現地事務所との連絡・調整、チームメンバーと科学技術部とのミーティングの通訳(英語)、チームメンバーの国家警察に対するプレゼンテーションの通訳、日本大使館の警備担当官(日本の県警からの派遣の警察官)とカンボジア国家警察との連絡役、カンボジア在 JICA SV、及びJICA青年海外協力隊が何らかの事件やトラブルに巻き込まれた際の、国家警察に対する協力要請等です。更に国家警察の要望で、科学技術部の警察官に日本語を教育する仕事が追加されました。日本人がカンボジア内で事件やトラブルに巻き込まれた際、正式の通訳到着までに簡単な日本語が判る警察官がいれば、役に立つのではないかと言うのがその理由でした。

在任中の記憶に残こる科学技術部に対する貢献としては、

  • 限られた予算のなかで、薬物分析のSVが初期段階の薬物分析に最低必要な試薬、器材を提供
  • 日本の警察で長年鑑識を経験され、タイ国家警察に現役の頃から専門家として派遣されて指導しておられた方が、定年後、タイ国家警察へJICA SVとして、タイ国家警察へ赴任しておられたので、JICAカンボジア事務所の協力をえて、カンボジア国家警察の科学技術部へ鑑識の指導に来ていただいた
  • 薬物分析経験者のSVが、カンボジア国家警察の科学技術部が主催した全国から招集した鑑識担当者の研修会において、クロマトグラフィーによる薬物分析に関して説明会を行った。
  • 予算が限られていたので、私が日本で在籍したロータリークラブに依頼し、指紋鑑別機を贈呈した。指紋鑑別機の贈呈式には贈呈したロータリークラブ会員約20人、カンボジア国家警察幹部、科学技術部、JICAカンボジア事務所SV担当者、私も出席し、国家警察で盛大に行われた。

指紋鑑定機贈呈式。左4人が贈呈したロータリアン、マシンの左が国家警察副長官
マシン右がロータリークラブ会長。右端が筆者

任務以外では、科学技術部の人たちと、月1回のペースで、メコン川岸辺にあるレストランでカンボジアの歌手の歌を聴きながら、ビールやウイスキーを一緒に飲み、料理をたべ、お互いに楽しくコミュニケーション(英語での通訳を介して)をしたのが、思い出となっています。又、同時期にカンボジアに私を含め8人がSVとして派遣されていましたが、月に数回のペースで中華レストラン等に集まり、ビールや料理を食べながら、雑談や情報交換し、ストレスの発散に役立ちました。

カンボジアは東南アジアのインドシナ半島に位置し、国土面積は18万平方キロメートル。隣国のベトナムの3分の1、日本の約半分の国土を有しています。気候は熱帯モンスーン気候であり、季節は大きく6月-10月の雨季と11月-5月の乾季に分かれ、最も熱い時期である3月-5月は、日中の気温が摂氏40度に達します。人口は1,339万人。ポルポト時代の虐殺や内戦の影響で若年者人口の比率が高く、15歳未満の人口が全人口の38.7%となっています。 民族はクメール人が90%、ベトナム人が5%、華人1%。言語はクメール語が公用語、宗教は国民の90%以上が上座部仏教です。 世界遺産としてはアンコールワットがカンボジアで2番目に大きい都市シムレアップの近郊にあり、毎年、沢山の観光客が海外から訪れています。


アンコールワット遺跡の前で
指紋鑑識機を寄贈したロータリアンとその夫人達と。筆者は後列中央の黒野球帽

今度はプライベートでカンボジアを訪れ、当時お世話になったり親しくした人たちや、プノンペン・ロータリー・クラブのメンバーにも会い、旧交を暖めたいと思っています。

以上